ちょっと本気で
ラハールとフロンの
少女漫画ちっくを描きたくなりまして




















あたしはエトナ。
超時空美少女悪魔とはあたしのことよ。

え? 知らない?

堕ちろ。


ともかくあたしは、“一応”仕えている魔王ラハール殿下の城で、
彼の治める(ていうか半放置状態の)魔界の一部「いけにえ横丁」特産品の一つであるマンモスプリンを
今まさに口に運ぼうとした所で。


「わたしだったら先端をチョロっと舐めて、
その後で垂れないように周りを円を描くように舐めますね〜」

「オレさまは最初から一気にくわえるぞ。
それから垂らすヒマもなく舐めてくわえて舐めてくわえる」

「え〜ダメですよラハールさん!
もっと味わって舐めないとかわいそうです!」

「お前のような女々しいやり方など我慢できるか!
男ならガッといくものだ!!」


部屋の外から聞こえてきた話し声に、
あたしはハアとうんざりした溜め息をついて扉を開けた。


「ちょっと〜昼間からディープなエロい会話しないでくれません? 殿下にフロンちゃん」


扉の先で向かい合っていたのは、堕天使になったフロンちゃんと殿下。
二人は悪魔特有の赤い目を丸くしてあたしに向ければ。


「は? 何を言っているのだお前」

「そうですよエトナさん、わたし達はソフトクリームの食べ方を話してたんです。
くわえるのが先か舐めるのが先かっていう……」


なに紛らわしい&どうでもいい話題で盛り上がってんのよこのお子様ズは!
これじゃ想像したあたしの方がエロいって事になるじゃないのよ!


「そもそも何でンな話題を作るワケ!?」

「お前こそ何が“そもそも”なのだ。
脳内の過程を話せ過程を」

「えっとですね、わたしがラハールさんにもっと“愛”を知ってもらおうと思ったんです。
“愛”と言えばやはり、最終的なものは男女の愛だと思うんです。
だから男女の愛、すなわち恋愛の常套手段ことデートイベントの『ソフトクリームの食べ合い』を知ってほしかったんですよ」


相変わらずのマイペースっぷりで殿下の催促を素でスルーしたフロンちゃんはバカ丁寧に現状を解説してくれた。
しかしやはりこの子は気付いていないのだろう。
いわくの『常套手段』は古来よりのバカップル法ということに。
まあこの愛マニアには“愛”と呼べるもの全てに隔たりは無いのだろうけど。
むしろ歪んだ愛すらもバッチコーイな勢いの気がする。
ああ、この子やっぱ大物だわ。


「……あれ、でもそれってまずは相手がいないと成り立たないんじゃないの?
まあいたとしても殿下が対象じゃ無駄以外のなにものでも無いけど」


あたしの初歩のツッコミにフロンちゃんはハッ!! と驚愕の顔を露にした。
しかしそれと同時に専用の脳がフル回転したらしく、すぐにキラーン☆ と勇ましい顔つきに変わる。


「そうでした! まずはラハールさんに好きな人を見つけてあげればいいんです!
そうすればラハールさんも愛の素晴らしさをひしひしと感じられるハズです!!」

勝手に話を進めていくフロンちゃんにはさすがに殿下も“お、おい、何を勝手に……”とタンマをかけるけど、
一度走り出してしまった愛天使はブレーキなど元々搭載していない。


「という訳でっ!
第一回『魔王ラハールのLOVEなる相手を見つけましょ』大会IN THE 暗黒議会
開催です!!」

「ちょっと待てぇぇぇぇい!!!」


どこからか出したマイクを持ってノリノリなフロンちゃんはすでに議会堂を貸し切っている。
殿下の叫びはこの広い空間に虚しく響き渡るだけ。
いつもの議員席には最近面白そうなイベントも無くヒマで死んでしまいそうな悪魔達が観客上等で詰めている。
中には弁当屋まで練り歩く始末だ……ヤバイ、あたしもプリニー達を派遣して金を巻き上げなきゃ。


「んじゃ殿下、後は頑張って下さいねー。
ウオラァ! プリニー共さっさと暗黒まんじゅう裏ルートで買ってこいやぁ!!」

「了解ッス!」

「あっ、コラ待たんか裏切り者!!」

「それでは早速お相手候補の登場です。
エントリーナンバー1! 黒髪ポニーテールが素敵な侍レンさん!
その攻撃力は師匠のラハールさんとトップの座を争うほどです!
得意料理は肉じゃが!
家庭的でいいですね〜、わたしは上手く作れないんですよ肉じゃが」

「そんな事はどうでもいい!!
おいレン、何でオレさまの相手候補にエントリーしているのだ貴様!!」

「え? これに優勝すれば殿下と真剣勝負ができると聞いて」

「あ〜〜〜うあうあうあう!
それでは次の候補に参上してもらいましょう!」

「オレさまがこの場を惨状にしてくれるわ!!」


メテオインパクト発動のモーションに入ろうとする殿下を弟子の悪魔に押さえさせて、フロンちゃんは司会を進める。
あたしはプリニー共をパシらせて暗黒まんじゅうの売り上げを進める。


「エントリーナンバー2! ショートカットがカッコいい女戦士ジナさん!
師匠のエトナさんとのタッグはお任せです!
特技はゲームの長時間プレイ!
わたしもレベルを上げたいキャラがいる時は手伝ってもらいました〜」

「言っておくが優勝したら貴様の望みが叶うというのはデマだからな!」

「うっそマジすか!?
あのゲーム限定版、予約特典付きでもらえると思ったのに〜」


さすがあたしの自慢の弟子。
死なない程度の廃人プレイでやり込みコンテスト用のデータを作った心意気は健在のようね。
ちなみに投稿者の名前はあたしにしてもらいましたが何か?
しかしそろそろ並の悪魔では押さえられなくなった殿下が爆発した模様。
人の恋路を邪魔する者は
ゴー・トゥー・レッドムーンの殺気を滲ませながらフロンちゃんに歩み寄っていく。
あーらら、そろそろ終いみたいね……えーと収益はっと。


「ラ、ラハールさん! ダメですよ候補者から選ばないと!
まだ他にも……」

「ええい、黙らんかこのたわけ!!」

「たっ! たわけとはひどいじゃないですか!
わたしはラハールさんに好きな人を……」

「必要無いと言っている!!
大体オレさまの好きなヤツはな―――!!」


そう、殿下が口を滑らせた事で。
会場は一気に静まり返り。


「……はへっ?」


フロンちゃんも、ポカンと目を丸くすれば。
殿下は自分が口にした言葉を、脳内で高速に連続再生したらしく。


「……あ、いや……その……」


と、今までの勢いはどこへやら。
引きつった頬を段々赤らめていき。
冷や汗がダラダラと流れていく。
このレアな現象に、呆然としていたあたし含む悪魔達は。


「……プ、
プリニーーーー!!!
急いでカメラ回せ!! 映像撮って局に売り込むのよ!!
魔界全土放送いや天界含む宇宙放送でこのネタ流せば視聴率50%超えも夢じゃないわ!!!」

「了解ッス!!」

「ちょっとマジで!? ちょっとマジで!?
あの殿下が恋愛事で顔赤くしてるよ!?」

「っつーかここでついに言っちまうのかどうなんだええオイ!?」

「こんな所で最大イベントに立ち会えるとは思わなかったわよ!!
ああそうだ友達呼んでこなきゃ!!」

「チックショォォォ!! 何でこういう時に限って写メのバッテリー切れてんだよ!!」

「もしもし!? 新刊のネタ光臨したからイベント立ち上げる準備して!!」


一転して色々な意味でてんやわんやの大騒ぎになった議会。
そんな外野に一切関与することなく硬直したままだった主役の二人。
その内、フロンちゃんは段々と瞳を輝かせていって。


「ラハールさん!」

「なっ、何だ!?」


突然の呼びかけにおもくそ動揺している殿下は裏声で返してしまった。
果たしてフロンちゃんは殿下に何を言うつもりなのだろうか!?


「エトナ様、マイク入ってないッス」

「さっさと準備しろクズが!!」


クリチェフスコイ様&あたし愛用のロンギヌスをズグショッ! とブッ刺したプリニーは
“たしかにオイラはどうしようもないクズで転生したッスけどわざわざ言わなくてもいいじゃないッスか〜”
と他のプリニー達に抜くのを手伝ってもらっているがそんなことより実況中継よ。
ジリジリと殿下に迫っていくフロンちゃんの口から出された言葉は。


「ラハールさん! 好きな人ができたんですね!?
ごめんなさい! わたしったら思い込みでラハールさんの恋路をお邪魔してしまって……。
でも安心しました!
ラハールさん、その人と永遠の愛を学んでいってくださいね!
わたし応援してますから!!」

「は?」


今度は殿下がポカーンと呆然する番だった。
おそらく殿下は予想外なフロンちゃんのコメントに全ての思考がぶっ飛んだのだろう。
がしかし、ここでそのフロンちゃんの想像通りにさせておく訳にはいかない殿下は。
頭についてる二本の触角をピーンと伸ばし、激・怒りモードに入った。


「違う!! オレさまに好きな奴などいない!!」

「照れなくてもいいんですよ〜。
大丈夫、わたしわかってますから」

「わかってなどいない!!」

「そうですね〜、それじゃあわかっていないわたしに、好きな人はどんな人か教えてくれませんか?」


はた目では照れ屋な子供と穏やかな大人に見えるが、
実際は天然ボケかます女の子に苦しむ男の子の図だ。
よしカメラ、ズームインよ。
ブルブルと拳を震えさせている殿下は、やがて意を決したようにキッ、と鋭い目をフロンちゃんに向け。


「オレさまが好きな奴は!
黒髪でもポニーテールでも破壊力でも肉じゃがを作れるでもショートカットでもやり込みが得意でも無い奴だ!!」


そう、言い切った。


「……それって……」


目を瞬かせたフロンちゃんが言葉を続ける前に、殿下は標準装備のマフラーを翼に変化させて議会から飛び去った。
とは言っても天井に出口は無いのでわざわざ獄炎ナックルで壁に穴開けてだけど。


「……範囲、広すぎませんか?」


結局、殿下の『好きな人』は特定できず、困ったように首を傾げたフロンちゃん。
このシーンで映像は終わりね。
ワガママ魔王と天然天使というこの二人の組み合わせは、色々な意味で次元を超えて注目されている。
そんな訳で二人の何らかの進展を収めたブツは高く売れるのだ。
これからもカメラは手放せないわね。


「ま、金が絡まなくても、あたしは普通に面白がってるけどね」


それなりに頑張りなさいな、殿下にフロンちゃん♪











〜あとがき〜

エトナ視点でラハフロ少女漫画ちっく? を描いてみました。
少女漫画を描いてるとちゃぶ台ひっくり返したくなるのは本当ですね!
自我を保つために外野で騒がせてみましたが。

久しぶりにディスガイア描きましたねー、ギャグの雰囲気が懐かしいです。
エトナ視点だと面白そうでしたが……何で管理人のエトナは毎回ラハフロビデオ撮ってるんだろう。
以前に描きまくってたディス作品は載せる勇気ありませんが。

最初のネタは流行ってるバトンより浮かびました、それではこの辺で。


(2006・3・12)

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